分けるといいことあるぞ(その2)

前回記事↓の続きです。

X氏とT氏との間の「あんこ信託契約」のおさらいです。
委託者(財産を任せる人):X氏
受託者(財産を任される人、名目上の財産の所有者):T氏
受益者(信託契約の恩恵を受ける人、実質上の財産の所有者):X氏 
信託財産:X氏の金銭(あんこ購入資金として、旅費交通費含む)
信託の目的:究極のあんこスイーツの追求

なお、受益者が享受する権利を「受益権」と呼びます。
通常、当初の委託者と受益者は同一人(この場合X氏)にします。
別の人にすると、財産が実質的にX氏から第三者に移動したことになり、「贈与」とみなされて贈与税が発生するからです。

ちなみにX氏には息子のY氏がいますが、妻とは離婚しています。
聞けば、元妻さんはあんこが苦手で、ホイップクリームが好きだったとか。
そこだけはどうしてもX氏は許せなかったとのことです。

その頃に「ザクもっちリングあずき&ホイップ」があって、あずきとホイップでちょうど分けてシェアしたりすれば、夫婦間の絆も深まったのかも知れませんが…

本件信託契約では、X氏に万が一のことがあった場合、X氏の受益権はY氏が引き継ぐことになっています。

そうなった場合、受託者のT氏は今度はY氏のために信託財産を管理していくのです。

受益権がX氏の死亡の場合に息子のY氏に引き継がれるということは、ちょっと遺言に似ていますよね。

ただ、遺言は遺言者が死亡してからでないと効力が発生しないのに対し、信託の場合は契約時にすでに効力が発生するのが大きな違いです。

遺言の場合は、遺言後~相続発生の間に遺言者が認知症などで判断能力を喪失した場合の対策も別途必要になりますが(典型的なのが任意後見契約)、信託の場合は受益者が判断能力を喪失しても、信託財産がまったく影響を受けないというのは、前回記事で述べた通りです。

そしてもう一つ、信託には遺言との大きな違いがあります。

Y氏には妻と子のZちゃん(未成年)がいます。
X氏がもし遺言でY氏にあんこ購入資金を含めた現金を相続させることをしていたとします。

これはこれで良いのですが、遺言で財産の承継先を決められるのがは一代限りです。

例えば「(あんこ資金用の)〇〇銀行の△△支店の預貯金をYに相続させ、Yの死亡後はZに相続させる」という遺言はできません。

Y氏が相続したXの財産は遺言の発効によりX氏の財産ではなくなり、Y氏独自の財産になるからです。
で、もしY氏に相続が発生した場合は、妻と子Zちゃんが相続することになります。

Yの妻は実はカスタードクリーム派でやはりあんこが苦手なので、実はX氏は義理の娘である息子の妻のことを良く思っていません。
義理の妻も、自分の価値観を押し付けようとする義父に対して少なからず苦手意識を持っています。

そんなわけで、X氏は自分の財産が義理の娘に行ってほしくないのです。
そこで、本件信託契約においては、X氏の次の受益者をY氏、そのまた次の受益者を孫のZちゃんに指定しています。

遺言ではできなかった数世代の財産承継が信託では可能となるのですね。

X氏は目の中に入れても痛くない孫を一流のあんこニストに洗脳、もとい育て上げるべく、全国各地のあんこスイーツをせっせと食べさせてあげています。
そのためにT氏はX氏のために全国津々浦々究極のあんこスイーツを求めて奔走しているのです。

もっとも、Y氏自身もあんこ好きではありますが、妻の価値観を十二分に尊重しているので夫婦仲はすこぶる円満です。
父を反面教師にしたのでしょうか?

「おしどり夫婦」と良く言いますが、やはり今の時代はお互いの価値観を尊重する「ザクもっちリング夫婦」が理想の夫婦像なのかも知れませんね。

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