おはぎが食べたい!
A氏(70歳)は会社経営者。事業はすこぶる順調だが、悩みの種は尽きない。
先祖代々の自分の土地のことや、会社の後継者問題、いろいろあるけど、目下の悩みは、どうしてもどうしてもG屋のおはぎが食べたくて仕事が手につかないこと。
G屋のおはぎは絶品で全国的に有名で、お店は常に行列ができる。ネット販売は一切やっておらず、入手するためには平均2時間は行列に並ばないといけないが、A氏には行列に並び続ける時間的・体力的余裕がない。
「そうだ、いいこと思いついた」
A氏は自分の甥であり、会社の専務取締役であるBを社長室に呼び出した。
「B、ちょっと頼みがある」
「なんですか、おじさん」
「こら、社内では『社長』と呼ばんか。公私混同は良くないぞ」
縁故入社なので仕方がないが、Bはまだ甘さが抜けないところがある。甘いのはあんこだけで良い。
「すみません、社長。要件はなんですか?」
A氏はBに財布を手渡した。
「ここに10万円ある。お前、今からG屋に行っておはぎを買ってこい。つぶあんときなこ3つずつだ。いいな」
「あの社長、それ業務ですか?それこそ公私混同では・・・」
「やかましい!早く行ってこい!ぐずぐずしてたら売り切れてしまうぞ!」
Bはぶつぶつ言いながら社長室を出て行った。
「G屋ってめちゃくちゃ並ばなあかんやん、このくそ暑いのに熱中症で倒れたらどうするんだ。パワハラで訴えるぞ、あのあんこ狂いのバカ社長!」
数時間後、Bは汗だくになって、G屋の紙袋を手に社長室に戻ってきた。
A氏はニコニコ顔でBを出迎えた。
「おー、でかした!暑いのにご苦労さん!」
AはBから紙袋を受け取り、おはぎの入った箱の包み紙を一瞬の早業ではぎ取って、箱のふたを開けた。中にはつぶあんときなこのおはぎがぎっしり。まるで宝石のように輝いている…ようにA氏には見えた。
「さっそくお茶にしよう。B、お前もどうだ」
「社長、とりあえず財布もお返しします」
BはA氏に財布を差し出そうとすると
「あ、それは持っておいてくれ」
おはぎの代金は1,000円少しなので、財布の残りは9万9,000円弱。全部くれるのか?いやケチな社長がそんなことするわけないか…
「その財布の金は全部お前に託した。今後もあんこのお使いを頼むときがあるから、それを使ってくれ。また、お前も美味しそうなあんこのお菓子やパンがあったら自由に買ってワシのところに持ってきてくれてもよい。いいか、あんこだけだぞ。くれぐれもちょっと流行っているからと言って舶来ものの洋菓子なんぞ買うでないぞ。あんな生クリームまみれの食いもんなんて、見るからに身体に毒だ。喜んで食べるヤツの気がしれないわ」
「(洋菓子に親を殺されたのかいな、このジジィ)わかりました、おじ…いや社長」
ちょっと話が長くなりましたが、実はこれも「信託」なのです。
A氏はBに10万円を託しましたが、この10万円が「信託財産」です。
この財産はおはぎや他のあんこのお菓子やパンを買うためでという目的に沿うのであればBが「自由に」遣うことができます。
この金銭で買ったおはぎは信託された金銭がおはぎに形を変えたもので信託「財産」であることに変わりありません(A氏の胃袋に納まるのは時間の問題ですが)
まとめると
委託者:A、受託者:B、受益者:A
信託財産:金銭10万円
とする金銭の信託契約です。
信託の目的(ここが重要)は「A氏の充実したあんこライフ」でしょうか。
これが信託の基本形です。
こう考えると、信託ってそんなに難しいものではないでしょ。
今週末の勉強会では、このように楽しく緩く勉強して行きます。
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