アンパンは誰のもの?
ここにアンパンがあります。
袋にマジックで「田村」と名前が書いてあります。
田村さんのアンパンらしいです。
もし、他の誰かが勝手に袋を開けて食べてしまったらきっと激怒されるでしょう(笑)
名前を書いておくぐらい大事に取ってあるのでしょう。
でも、田村さんを良く知る人がこんなこと言いました。
「彼があんこを大事に取っておくなんてありえない。だって彼は新大阪駅で赤福を買って新幹線に乗り込んだら京都駅に着くまでにすべて平らげてしまう人だし、昨日も小倉駅でぎおん太鼓を買って帰ってきたばかりで、全部食べてしまったらしいから」
なるほど、確かに不思議な話です。
体調不良か、あるいは「一人アンパンおあずけプレイ」とか、ちょっとドMなことでもやっているのでしょうか?
氣になって夜も眠れないので、思い切って田村氏に聞いてみました。なぜアンパンを食べないのかと?
「これは私のアンパンじゃないのです。だから食べるわけには行きません」
え、だって名前書いているじゃないですか?
「あくまで私は名前だけの所有者です。真の所有者は他にいるのです」
なんだって!?なんだかワケ分からなくなってきた。
「私はX氏からこのアンパンを信託されているのです」
信託?それは美味しいのですか?
「X氏は私のことを信じて、このアンパンを託してくれたのです」
なるほど、それで「信託」ですか。で信託すると何かいいことがあるのですか?
「私がアンパンの受託者として、X氏の『自分のアンパンを有効活用してほしい』と言う想いに応えるためにアンパンの表向きの所有者となっています」
有効活用とはどんなことですか
「例えばですが、X氏はカレーパンも好物なので、美味しそうなカレーパンを持っている人がいれば、私がその人とアンパンを物々交換して、今度はカレーパンの袋に自分の名前をマジックで書いて管理します。
あるいは、あんこ中毒の人がいて、禁断症状で手が震えたような状態でアンパンを売ってくれと私に言ってきた場合は、2,000円ぐらいで譲ってあげることが可能です」
かなりのぼったくりですね。たしかこのアンパンは某事務所の近くのライフで税込90円ぐらいで売っていたので田村さん1,900円ぐらいまるもうけですね。商売上手ですね!
「いや、アンパンの売って得たお金は私のものではなく当然X氏のものです。ですが、私がそのお金で他に美味しいアンパン、おはぎ、あるいはその他のあんこスイーツをX氏のために買うことはX氏から了解を得ています。
もちろん、X氏が自分でアンパンを食べたいというのであればお返ししますし、あるいは、もしX氏に万が一のことがあれば今度はX氏の子のY氏のためにアンパンを管理します。それがX氏のたっての希望です」
よくわからないたとえ話かも知れませんが、これが「信託」です。
通常、アンパンの中身も袋も同じ人の物ですが、
アンパンを信託することで、アンパンの所有者を名義上の所有者(袋に名前を書いた人)と実質上の所有者(食べたい時に食べることができる人)に分けることができます。
多くの人にとっては初めて聞く概念かも知れませんが、この信託の仕組みを使えば色んなことができるのです。
おいおい紹介していきますので、お楽しみに!