遺言の限界
自筆証書遺言が通るかどうか、ヒヤヒヤ…もとい貴重な体験をさせていただきましたが、
(↑上の記事から順にお読みください)
一つ言えることは、(法的に有効であれば)どんな形であれ遺言を遺しておくことに越したことはないということです。
とはいえ、当たり前の話といえばそうなのですが、遺言が効力を発揮するのは遺言者がお亡くなりになってからの話です。
もっとも、遺言書に書いた財産を氣が変わって、生前に処分するのはもちろん自由です。
遺言書に子供に自宅不動産を相続させる、と書いていても介護施設に入るための資金作りのために売却するケースも考えられます。
ただ、その時に遺言者本人が意思表示できるのかどうかが問題です。
今は80代の2人に1人が認知症になる時代です。
すなわち、80年以上長生きした人の半数は、
健康→認知症→死亡
という段階を踏むことになります。
もしも生前に不動産を売却する必要が生じた場合、当の本人が意思表示できなければ、家庭裁判所に申し立てて成年後見人等を選任してもらい、成年後見人が家裁の許可を得てから、と非常に迂遠なステップを経る必要があります。
なおかつ、不動産を処分できれば成年後見人はお役御免というわけではなく、原則ご本人がお亡くなりになるまで成年後見人がご本人の財産管理をすることになります。
成年後見人には親族(子など)がなれることもありますが、最近は司法書士や弁護士といった専門家がなることが多いです。
専門家であるので、当然ながらボランティアではなく報酬も発生します。
子にしてみれば、専門家とは言え、見ず知らずの第三者に親の財産を管理されることに少なからず抵抗感を示すことも少なくないようです。
要するに、きっちり遺言を書いたとしても、
健康→(遺言)→認知症→死亡
のルートをたどることになった場合の備えが遺言だけでは難しくなるということです。
では、どうやって遺言書の限界を補うのか?
次回以降に書いていきます。